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コラム|化猫

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ペヤングソースやきそばの経営学 

2003/02/25

レッツ合資会社管理人 化猫

借金してまで商売するな!
月商の3倍以上の貯蓄がなければ優良企業とはいえない!
丸橋善一社長が実践する「究極の責任経営」とは?

とてつもない社長がいた!

 ペヤングソースやきそばの製造元、まるか食品株式会社の丸橋善一社長のこと。私はコピーライターをしていた頃、幸運にも、マスコミにほとんど露出することのない同氏を取材する機会に恵まれました。

 丸橋善一氏は、青年時代から先代社長(創業者/丸橋嘉蔵氏)とともにリヤカーで乾めん売りを行い、今日のまるか食品の土台を築いた人物です。メジャー企業の仲間入りをした契機は、もちろん、ペヤングソースやきそばの発売(昭和50年)だったわけですが、焼そばづくりからネーミング、四角い容器、広告宣伝にいたるまで「すべて自分のアイデアで指揮した」というのです。ペヤングの意味は「ペア+ヤングの造語で、カップルに食べてもらいたかった」、四角い容器は「縁日の屋台の焼そばからヒントを得た」等々、まるで昨日の出来事のように鮮明に語る姿が、事実を物語っているように思えました。

 丸橋社長のアイデアは間違えなく一流で、商品開発、広告宣伝にかけるパワーはすさまじいものがあります。とはいえ、それだけでカップめん戦争に勝ち抜けるほど、列強が甘い存在ではないこともまた事実。それに打ち勝つ強さの秘密はどこにあるのでしょうか?気になった私は、初老の紳士然とした「成功者」に向かって、生意気にも経営の秘訣などを伺ってみることにしました。すると丸橋氏は、静かな口調で「無借金経営ですよ」と即答。先代社長の「借金してまで商売するな!」という教えを、今日にいたるまで徹底して守ってきたというのです。しかし・・・私は反論せずにはいられませんでした。「いくら何でも、工場まで無借金では建てられないでしょう?」社長の答えは、首を横に2回振ることでした。同社は1日30万食の生産を可能とする大規模無人化工場を2拠点有していましたが、驚くなかれ、いずれもキャッシュで建てたというのです。「経営者って、仕事が忙しくなってくると、設備投資しようかどうか迷いますよね。でも、答えはとっても簡単なんですよ。どんな計画もキャッシュがなければストップです」と断言する丸橋氏。

 そればかりではありません。氏は、工場の設備1式はもちろん、事務所の什器から鉛筆1本、社庭の植木にいたるまで、購入金額を明確に記憶していたのです。なぜかと尋ねたら「すべて私のものだからです」と胸をはって答えました。もちろん、会社である限り、それらが個人の財産でないことは明らかです。しかし、そこまで気持ちよく会社を「私物化」できる社長に、私は出会ったことがありませんでした。

 会社は所有と経営が分離した物的な存在といわれます。会社の財産は個人の財産ではない、従って、会社の負債も個人の負債ではないという「間接有限責任の論理」がここで成立するわけです。しかし、経営者は多かれ少なかれ、会社の財産を私物化しています。そのうえ、負債については有限責任を盾に、逃げてしまう社長がなんと多いことか!

 私が丸橋社長から学んだことは、会社の私物化ではなく、むしろ経営責任の取り方だったのではないかと思います。株主に対する責任、債権者に対する責任、従業員に対する責任、社会に対する責任。無借金経営こそ「究極の責任経営」でもあったのです。ちなみに、丸橋社長に、優良企業の条件を伺ったところ、「無借金を原則として、月商の3倍以上の貯蓄を持っていることが最低条件」という答えが返ってきました。年商12億の会社であれば、3億の貯蓄が最低条件だということ。さりげない発言ですが、相当高いハードルですよね・・・。ちなみに同社は「今でこそ低金利になってしまいましたが、バブルの高金利時代は、銀行の利息だけで従業員の基本給はまかなえた」(社長談)ほどの財務状況のようです。ここまで堅牢な牙城を築いて、はじめて経営者は自己の責任について語れるのではないか、と身が引き締まる思いがしました。

 経営者、とくにベンチャー企業にとって、会社は投資対象の「商品」という考え方が台頭していています。このような価値観からすれば、丸橋善一氏のような経営手法は、同族的、閉鎖的、ワンマン経営の典型と一蹴されてしまうかもしれません。しかし、そうして、つねに関係者に責任を取り、利益を税金として還元し、社会貢献している会社と、いつ沈むかわからない「豪華客船」を他人の資金提供で建造し、沈没前に客を置き去りにして、自分だけ逃げようとしている船長と、どちらが立派といえるでしょうか。また、これからの時代、どちらのタイプの経営者を目指すべきでしょうか。


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